日本の戦争システム
自衛隊をイラク占領に参加させる「イラク新法案」が国会提出されようとしている。米英軍が占領を続け「戦争状態が継続している」(石破防衛庁長官)イラクに、日本の武装部隊を送り込もうというのだ。有事関連三法案が民主党も加わり九割近い賛成で衆議院を通過する国会の下で、政府は「イラク新法」も一気に成立させようとしている。
これまでも政府は、自衛隊をインド洋・アラビア海に居座らせ、米軍に油と情報を与え、アフガニスタン・イラクへの攻撃に参戦してきた。有事法制・「イラク新法」は、この実態を法的に追認しイラク民衆に直接銃をつきつけることとなる。
個々の法案の成立か否かというレベルだけに運動の目が奪われるなら、戦争を止めることはできない。戦争システムを変える道は何か。それを指し示したのが、世界のイラク反戦闘争であり、「東京宣言」(五月二十六日、本紙七九一号掲載)だ。
世界の「スーパーパワー」
二月十五日のイラク反戦行動は地球を一周し、一千万人以上が参加する空前の規模となった。数か月間、全世界で展開された運動は、開戦を遅らせ、攻撃を正当化する国連決議を作らせず、ブッシュとブレアを孤立させた。結果的に止めることはできなかったが、世界の民衆は自らの力に確信を持った。国際法違反の戦争犯罪は世界に知れわたった。地球規模の反戦行動は、超大国(スーパーパワー)アメリカに対抗する「もう一つのスーパーパワー」(ニューヨークタイムズ)の出現を意味した。
東京宣言は、スーパーパワーの一翼の米ANSWER、英ストップ戦争連合など五か国十二の反戦団体が討議し、戦争システムを止める方針をまとめたものだ。
その特徴は第一に、戦争犯罪を徹底的に暴き出し追及する運動の重要性である。戦争犯罪の調査活動、国際戦犯民衆法廷運動、戦争と占領で儲ける企業を世界的に糾弾する行動を強めてこそ、占領を終わらせ次の戦争を始まる前に止める力になる。
第二に、アジアの課題、すなわち朝鮮への日米の先制攻撃策動に反対する国際共同行動を呼びかけたことだ。攻撃対象とされるシリア・イランなどイスラム圏と日本・韓国をはじめアジア民衆との連帯が強調された。
国際連帯こそ力
東京宣言は、昨年十二月の「カイロ宣言を引き継ぎ」とうたわれているように、グローバル資本の戦争に反対する国際連帯の蓄積の上に生まれた。カイロ宣言は、ヨーロッパ・アラブ・北米・中南米から活動家が集まりアメリカのイラク攻撃に反対する国際行動を呼びかけた。そして数か月に及ぶ地球規模の反戦行動につながった。スーパーパワーは自然に生まれたのではない。そこには、国際連帯を求める無数の名もない活動家たちの努力があった。東京宣言には、戦争システムを止める国際連帯を求める世界の民衆の願いが反映している。
東京宣言を広げ実行することは、国会の法案動向にだけ目を奪われ展望を見失いかけている日本の平和運動を再生し、日米英の戦争屋を国際的に包囲する力となるにちがいない。 (六月一日)