「始まる前に止めよう」を合言葉にした世界の反戦運動。それは二月十五日、地球を一周した一千万を超える人のウェーブで頂点に達した。この流れは日本でも大きな変化を生み出した。今まで行動したことのない若者や、何の組織にも属していない主婦が口コミやインターネットで行動を知り、誘い合って参加した。「動員」という名の指令型の運動の殻を破る自発的な運動が生まれた。
「ブッシュの独断で勝手に人殺しをさせない」と語る若者。乳母車を押す若い母親は「後の世代のためにも平和を」。米大使館前でキャンドルをともしてじっと祈る女性や「戦争、反対」とくり返し叫ぶ人の波。
反戦行動の主役は若者たち
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誰もが、それぞれの思いを伝えるカラフルなプラカードやイラクの子どもたちの写真を持ち、爆弾の下で苦しむ人々に思いを寄せて訴える。所属団体を示す腕章や印刷されたゼッケンが目立つこれまでのデモとはまるで様相は一変した。
こうした息吹に触れて新たな運動を模索する労働組合員も増えている。国労闘争団員は「多種多様な人の集まり方を作ることができれば運動の新たな発展があるのでは」。また、ある労組は大きな布に一人一人の思いを書き込んだ旗を作った。「市民の運動に学んで」。若者の作る派手なものとは対照的で少々野暮ったいが、市民の運動が既成の団体も動かし始めていることを示すシーンだ。
米英軍のイラク制圧後、反戦運動は一見目立たなくなっている。運動は何も残さなかったのだろうか。
ギターを持って歌い続けてきた十四歳の少女は言う。「もう終わりという報道だけど、アメリカがイラクからどかない限り戦争は続いている」。初めて街頭に出た若い男性は「これまでアクションできずにやるせない気持ちだったが、自分も戦争に反対なのだと確信できた」と語る。
戦争に傷つく人々への思い、行動することの充実感は確実に若い世代の心に根付いている。この財産をさらに、イラク占領をやめさせる国際的な行動へと結びつけることが問われている。それは戦争の時代を変える力となるに違いない。
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