イラク反戦の闘いについて「共同行動を。効果的な行動を」と訴える米国のグローバル・エクスチェンジ(http://www.globalexchange.org/)。5・24〜25MDS国際連帯集会に出席したウォンダ・ウィッテーカーさんに話を聞いた。(五月二十六日)
同じ命の大切さ
●イラク反戦運動の盛り上がりの要因は何でしょうか。
イラク反戦運動はベトナム反戦運動を超えた。べトナム反戦は戦争が始まってからだが、今回は始まる前。当時は白人や、大学など教育を受けた学生が中心だったが、今回はもっと若い層、異なった階層が参加している。労働組合の参加もめざましく、反戦決議は職場レベルでも上げられた。
一晩にしてこれだけの運動に広がったのではない。ブッシュが大統領に違法に選ばれた時点で、民衆の中に許せないという嫌悪感が生まれていた。また、WTO(世界貿易機関)やIMF(国際通貨基金)の総会に向け、反グローバリゼーションのいくつもの運動グループが誕生し、市民が監視して勝手なことはさせないという機運があった。労働組合や有色人種地域の様々な組織が、アメリカの軍事外交政策と失業・社会福祉切り捨てなど国内問題とを結びつけて反戦を取り上げるようになった。これらに要因があったと思う。
●若者や女性の参加については。
私たちが工夫したのは、楽しい運動。二十五人ぐらいの単位で、ヨガとかストリートコンサートとか様々な趣味のグループに分けて、いろいろな人が参加できる場をもった。若者はそこでみんなとともにいることを実感し、話し合いを通して「自分たちは政府の政策に同調しているのではない、違うのだ」という思いを表現できたと思う。
テロ警報システムに対抗して平和のために警鐘を鳴らす意味で「コード・ピンク」をつくった。率直に言って白人が多いことが問題で、行動にはアリス・ウォーカー(黒人女性作家)やアルンダティ・ロイ(インド出身の作家)など有色人種の著名人に参加してもらい、見た目で有色人種も誰も参加できるんだという取り組みに広げていった。
●アフガニスタン戦争に対してはどんな活動を?
9・11テロの犠牲者遺族をアフガンに連れて行き、アフガン戦争の犠牲者と交流することで、心と心のつながりをつくってきた。同じ人間で、同じ命の大切さを持っていることを伝えたかった。アメリカ国内では、交流やアフガン民衆援助の取り組みを嘲る傾向がある。「金持ちのアメリカ人が貧しいアフガン人に金をばらまいている」と。そんな中で、意義のある取り組みだと思う。
原則は、ブッシュの戦争責任を追及して補償させること。現実には、ブッシュは責任をとろうとしないし、アフガン政府を通した援助では被害者個人にいきわたらない。ダイレクトな援助になるよう取り組んだ。
米企業に抗議行動
●対企業行動を紹介してください。
企業の前での抗議行動、対企業裁判支援などに取り組んでいる。グローバル企業は海外の工場や支店で現地の人を低賃金、劣悪な条件で働かせている。そこで、私たちは視察団を作って監視し、株主総会の場などで暴露する。現地の労働者の裁判も支援しているが、多くの労働者が勝っている。ナイキとの闘いでは、社長宅にも押しかけた。社長は「なんで家まで来たんだ」と怒ったが、効果はあった。
イラク反戦では、ベクテル本社の前でプラカードを掲げ、横断幕をはり出して抗議した。時には入り口を閉鎖した。イラク開戦直後には三千人の参加者が鎖を体に巻いてつなぎ、何時間も立った。警察が鎖を切って一人を逮捕すると次の仲間が入って続けた。トイレに行けないのでみんな紙おむつを着けて参加した。逮捕者は二千人に及び、護送のため市営バスが出るほどだった。
●イラク反戦の今後の活動は。
アメリカ企業が復興事業で契約を交わし、イラクに入ることに反対する。ベクテルやカーライル・グループがターゲットになる。重役の自宅にも押しかけて抗議するつもりだ。アフガンの取り組みを総括し、イラクでもリアリティ・ツアーに取り組みたい。イラク民衆の被害実態を知らされていないアメリカ人に必要なことだ。広報部を強化し、犠牲者の実態の報告会などを広げていく。同時に、援助金が被害者一人一人にダイレクトにいきわたるようなシステムを検討したい。
戦争は終わっていない
●日本の人々に訴えたいことは。
イラク開戦後、反戦運動は引いてしまったが、それでも私たちは闘いへの確信を持っている。ブッシュの戦争はまだ終わってないということを知っているからだ。一方、アメリカの基本的な生活構造は破壊され、不満が渦巻いている。失業者・ホームレスが増え、社会福祉・社会保障や教育制度は崩壊し、補助金で成立してきた多くのNGOが解散を余儀なくされた。
私は日本での集会に参加して国際連帯を実感した。共同行動を、効果的な行動をやろう。それぞれの国の偏狭なナショナリズムに同一化されている中で、それへの対案として、全世界のグローバルな平和運動のシンボルを築こう。敵もそれを一番恐れる。