昨年十一月、事故で傷ついた少年を救助中の救急隊員が、運転再開したJR西日本の列車にはねられ死亡する事故が発生した。安全確保を二の次にしたJRの姿勢に対し批判が広がっている。人権無視や安全切り捨てを続けるJRに対し、安全確保と公共交通としての責務を求めて「JR株主・市民の会」が五月三十一日に大阪で発足した。
同会準備会は、救急隊員死亡事故をきっかけに運動を開始した。昨年十二月二十六日には多発する事故への対策を求めて申し入れ書を提出。その後も「JRに安全と人権を」をテーマに連続学習会を開いてきた。JRを利用する障害者や現場の労働者など広範な人々とともに、バリアフリーの問題や安全切り捨ての実態を明らかにしてきた。
結成集会で、呼びかけ人の一人である桐生隆文さんは「「列車を一分たりとも遅らせるな」が死亡事故の根底にあった。事故後もなお天王寺駅でホーム要員が削減され、JRに安全問題への意識は足りない。学習会でJR労働者が訴えたように、「事故は現場労働者のせい」として原因追及より個人の責任追及に力をいれている。こういう経営姿勢を正していきたい」と呼びかけた。
立山学さんが講演(5月31日・大阪)
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利用者切り捨てるJR
記念講演でジャーナリストの立山学さんは「分割民営化の大罪は三つある。借金の国民への押し付け、鉄道の安全性の破壊、平和日本崩しだ」と指摘し、「分割民営化が成功したと言われる中身をきちんと精査していこう。借金は国民負担にさせたものだ。株主として安全問題を徹底的に追及する中でJRの経営体質が明らかになる」と株主・市民の会の結成を歓迎した。
闘う国労闘争団の牛島時彦さんは「六月二十日のILO(国際労働機関)総会に向け闘いを強めている。国鉄方式の首切りが全国化している。私たちの家族を含めて無権利状態を許さず、きっちり解決させていく」と訴えた。
討論の後、(1)JRの公共交通としての安全性、利用者の立場に立った経営を追求する(2)地方ローカル線を守り交通弱者の交通権を確保する(3)千四十七名の採用差別事件をはじめとした不当労働行為を根絶するなどの方針を確認。六月二十五日のJR西日本株主総会での発言や新たな公開質問書の提出、安全問題の学習会などに取り組むことを決定した。
鉄道ファンとして呼びかけ人に名を連ねた樋口肇さんは「JR西日本は一昨年の株主総会で海外の機関投資家から「儲からないローカル線に金をかけるな」と指摘され、昼間に列車を止めて保線工事を実施。代行バスも用意せず利用者を切り捨てた。公共交通としてやってはならないことをさせてはいけない」と株主総会での訴えの重要性をアピールした。