「始まる前に止めよう」のスローガンを打ち出し、全米・全世界のイラク反戦運動を引っぱってきたANSWER(戦争を止め人種差別を終わらせるため今行動を)、その中心を担うIAC(国際行動センター)。両団体の組織担当スタッフを務めるディアドレ・シノットさんに聞いた。(五月二十六日)
新しい運動の飛躍台
●5・24〜25国際連帯集会の 感想は。
参加して大きな希望を与えてもらった。戦争を仕掛けたのは米英の政府だから、米英の民衆がそれに反対しなければと考えるのは分かる。日本政府の場合、自衛隊を自由に使える法律を成立させようとはしているけれど、この戦争への直接の関与度は米英に比べて低い。その日本で、さまざまな階層の人々が目先の運動だけでなく、この恐るべき戦争を止める闘いが決定的に重要だと立ち上がった。アジアにも米英の戦争に反対する運動が広がった。この事実はきわめて高いレベルの政治的発展を示すものだと思う。
それはアメリカの運動に対しても、さらに組織化を続けることの重要性を教えてくれる。日本で、韓国で、世界で広がった行動は今回限りのものではない。私たちはこれからも継続した大衆的デモを積み重ねていける。そんな希望を持つことができた。
●イラク反戦運動の意義はど こにあると考えますか。
10・26デモを呼びかけた当時、こんなことを言う人がいた。「10・26では遅すぎる。戦争は始まってしまう」。実際はどうだったか。この巨大なデモの組織化は確実に開戦を遅らせた。中東にはすでに大兵力が展開していたが、その一部を引き揚げたり部隊を再編成せざるを得なかった。国連に問題を持ち込むはめになり、大量破壊兵器は口実にすぎないという主張が査察官にさえ支持されるに至った。
イラク戦争を阻もうと立ち上がった人々(3月15日・ワシントン)
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バグダッド陥落後はどうだろう。マスメディアが「反戦運動は終わり」と報道することもあり得た。しかし、そこに四月十二日の大デモが取り組まれた。メディアも結局、「反戦運動は『占領と帝国に反対』へとスローガンを変えた」と言うしかなかった。
強調したいのは、世界的な反戦運動によって人々は他のいろんな社会的政治的経済的課題にも目を開くようになったということ。多くの人が、自分たちは声を上げられる、デモで自らの意思を表明できる、他の人々にもそれを伝えることができる、と確信を持った。メディアを通じて強力に浸透してくるブルジョア・イデオロギーから抜け出し、別の見方があることに気づきつつある。これこそ新しい社会運動への飛躍台になる。
ベトナム反戦運動はアメリカの女性運動や公民権運動、ゲイ・レスビアン運動の生みの親になった。イラク反戦運動が生んだのは、民衆が自らの持つ集団としての力を感じ始めたという事実だろう。それは、一つの国の中だけの、自国政府にだけ向けられた孤立した運動ではない。他の国々の運動とハイレベルで連携し、相互に政治的に高め合っていくグローバルな運動だ。
民衆法廷を支持
●そのグローバルな運動の次 の課題は何でしょう。
相手は、アメリカの戦争マシーン。新たな局面に見合って運動の勢いを持続していくことだ。民衆法廷公聴会であれ東アジア反戦大会であれ、パレスチナ・フィリピン連帯デモであれ、さまざまな創造的な取り組みが政治的成長の深まりをつくり出す。
アメリカの目標の一つは中国政府を打倒すること。アメリカは朝鮮との協議に中国を加わらせているが、中国との真のパートナーシップを目指しているわけではない。中国と朝鮮の間にくさびを打ち込む狙いがある。今、朝鮮の指導者が悪魔化され、敵意が煽られている。朝鮮の核や社会体制をどう見るにせよ、朝鮮への攻撃に反対し、アメリカ帝国主義はいかなる国にも進歩的変化をもたらさないということをきちんと知らせていかなくてはならない。
イラク戦争の犯罪を裁く国際法廷もきわめて重要な取り組みだ。皆さんが今イラクに調査団を送り込んでいるのはすばらしい。こうした調査・証拠収集活動、アフガニスタン民衆法廷で行われている努力を全面的に支持したい。
「獣の腹」の中で闘う
●日本の反戦運動へのメッセ ージを。
日本の運動は特別の位置を占めている。日本帝国主義に踏みにじられたアジアの被害者への謝罪と補償を求める闘いがそうだ。日本は二度と帝国主義的冒険や戦争はしないと約束した。他の国の人々はそれを見て、自分たちの政府も日本と同じようになればと願っている。だから、戦争放棄の路線を堅持し、自衛隊が戦争に乗り出すのを阻止する運動は、とても大切だ。
そういう日本の闘いがアメリカではあまり知られていない。アメリカ国民は、小泉首相がブッシュと大の仲良しになり写真に収まる姿に疑問を感じている。世界の指導者から孤立したブッシュは、日本の首相を「友」にして孤立を打開したいのだろう。ここにも、日本のイラク占領参加を止める闘いの重要性がある。
アメリカの反戦行動にいつも日本から参加者がある。私たちは「獣の腹」の中で、つまり帝国主義の中心部で、世界の期待を裏切ってはならないと特別のプレッシャーを感じながら闘っている。日本の運動から差し伸べられる連帯は、そんな私たちに大きな勇気と希望を与えてくれる。