パレスチナ、イラクそれぞれの現実を伝える「緊急報告会」が六月十六日、都内で開かれた。主催は、市民の資金拠出でパレスチナビデオの自主制作をめざす「1コマ」サポーター事務局。会場は若い世代を中心に五百人の参加でぎっしりと埋まった。
現地からの報告に聞き入る聴衆
|
|
まず、「1コマ」サポーターの代表で、イラク戦争のさなかから五月下旬まで現地に滞在した森沢典子さんがパレスチナ問題の現実について報告。「ブッシュはイラク戦争の理由として大量破壊兵器とならんで中東の平和を挙げた。ならば、弱い立場に置かれたパレスチナの人々は何を感じているのか」とパレスチナ入りの動機を語る。森沢さんは「自爆テロ」を一方的に非難するアメリカや日本のマスコミへの疑問を投げかけた。「パレスチナの暴力ばかりがとりあげられるが、『自爆テロ』がどういう状況の中で生まれているのか考える必要があるのではないか」
例えば、自治区には「アパルトヘイト・ウォール」と呼ばれる高さ八メートルものコンクリートの壁が急速に建設されている。近づくものには容赦なく銃が向けられる。検問所では通学・通勤から買い物すらもが分断され、救急車にまで銃弾が打ち込まれる。病院に向かう妊婦が足止めを受けて出産してしまう例が百以上にも上っているという。「人の命を救おうと看護婦になった女性が屈辱を感じて『自爆テロ』に走りました。占領は、人の心をそこまで追いこんでいる」
次いで、占領下のイラクを訪れて戦争被害調査を進めてきたジャーナリスト広河隆一さん。たくさんの写真を使って現地の様子を伝えた。
いたるところで市民に銃をつきつける兵士。焼け焦げた車が放置されている。攻撃を受け車から逃げ出した子どもにむかって、ヘリコプターから銃弾が浴びせられたという。クラスター爆弾の子爆弾を全身に無数に浴びてベッドに横たわる少年。病院で亡くなった人たちの無数の身分証明書。わが子を殺され、自分も爆弾によるガラスを浴びて失明した若い母親。外国での治療を望んでも、事実が外に知られるのを恐れる米軍はそれを許さない。一人の男性は叫ぶ。「財産は補償できるかもしれない。しかし、妻は戻らない」
会場からはイラク新法に対して、「今私たちがしなければならないのは軍隊を送ることではないはずだ」と怒りを上げる人たちの感想があがった。
広河さんは「今回の調査は、アフガニスタン国際戦犯法廷の運動を進める人たちとの協力で実現した。戦争犯罪が隠される前に事実を明らかにすること。それが加害者の立場にたってしまった私たちの責任」。森沢さんは「有事立法が通って、次の世代にきちんと責任をとっていかなければならないと改めて思っています」。