無差別のミサイル攻撃
今、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへ武装ヘリによるミサイル攻撃を繰り返し、多数の市民を殺す無差別攻撃をエスカレートさせている。
六月十日、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス幹部が乗った車にイスラエル軍武装ヘリが七発のミサイルを打ち込んだ。この攻撃で女性・子ども三名が死亡、二十五人が負傷。翌日十一日、エルサレムで路線バスがハマスによる自爆攻撃(マスコミの言う「自爆テロ」)を受けイスラエル市民十六名が死亡、百人以上が負傷。ただちにイスラエル軍は、ガザ地区の家屋や車に対するミサイル攻撃で報復し、市民六人を含む十数人を死亡させた。ヘリ攻撃は十二日・十三日にも続き、救援に駆けつける民衆に対してもミサイルを撃ち込むという暴挙まで行った。
エルサレム中心部での自爆は二〇〇二年四月から一年以上起こっていなかった。イスラエル・シャロン政権はハマス幹部暗殺という挑発で自爆を引き出し、「報復」の軍事侵攻を強行した。「中東和平への行程表(ロードマップ)」を崩壊させるためである。
暗殺作戦批判するイスラエル世論
六月四日、ヨルダンのアカバで米・イスラエル・パレスチナ自治政府との三者会談がもたれ、米・EU(欧州連合)・ロシア・国連が共同提案した「ロードマップ」が中東和平へ進む道筋として当事者に承認された。
会談後の声明でシャロン首相はパレスチナ国家の建国を正式に承認したが、これは長い紛争の歴史で初めてのことだ。いまイスラエルの政権を握っている右派リクードは、パレスチナ自治政府との交渉を拒否して、力による占領の固定化を主張してきた政党だ。そのリクードですら、国際的には、パレスチナ国家を承認し平和共存する以外にないと認めざるをえない。それはシャロンの戦争政策の破綻を意味するものだ。
ロードマップの受け入れを巡ってリクード内部でシャロン首相とネタニヤフ財務相などとの対立が拡大。ハマス幹部への暗殺作戦という挑発行為は、和平の前進を阻もうとする右派勢力の悪あがきから引き起こされたものだ。
ブッシュ米大統領は、いったんこの暗殺作戦の「批判」を口にしたものの、エルサレムでの自爆事件後はイスラエル軍の侵攻を容認する姿勢を鮮明にした。米国の容認がイスラエルの国家テロを支えている。
だが、イスラエルのイディオト・アハロノト紙の世論調査(6/13)では暗殺作戦への反対が六七%に達し、ハーレツ紙も社説でイスラエル軍の連日の攻撃を批判している。パレスチナへの軍事侵攻こそがむしろイスラエルの平和と安全を脅かしているという世論の増大がその背景にある。
イスラエルの自治区への軍事侵攻・虐殺の即時停止、国際法違反の占領地からの撤退を求める声を全世界から広げなければならない。