2003年06月27日発行794号

【ウラン兵器使用は違法 アフガン国際戦犯民衆法廷 広島公聴会】

 「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷(ICTA)」の第九回公聴会は六月十五日、広島市の原爆資料館メモリアルホールで開催された。研究者や市民など二百人が参加した公聴会は、アフガンでもイラクでも米軍が使用した劣化ウラン兵器の犯罪性を告発した。

 前田朗共同代表は、ICTAの共同代表に中央大学名誉教授の伊藤成彦さんと元沖縄県読谷村長の山内徳信さんが就任し、四名一団体の共同代表体制が整ったことを報告。七月二十一日に第一回公判をひかえて「ICTA運動はいよいよ佳境に入ってきた」と開会あいさつした。

 公聴会の証言では、劣化ウラン兵器使用の危険性が明らかにされた。

 最初の証言者は、英国から来日したウラン兵器研究者のダイ・ウイリアムズさん。ダイさんは、「ウラン兵器」という表現で兵器開発の歴史を紹介した。対戦車兵器として貫通力を高めるために弾頭に劣化ウランを使用した固形貫通弾は第一世代の兵器であり、今日ではバンカーバスターやサーモバリック爆弾など次々と新しい兵器が開発され、第五世代とも呼べる時代に入っている。

 世界の研究者との情報交換で研究をすすめるダイさんは、アフガニスタンでの奇妙な病気を紹介した。「爆撃後の二日以内に、外傷もないのに複数の子どもが出血等で死んでいる。エボラ出血熱のような症状だ。これは劣化ウランを使用したボスニアと同様の症状だ」。さらに、カブールの爆撃地の近くでは、子どもの尿から劣化ウランではない高濃度の天然ウランが検出されているという。

 最後にダイさんは、「ウラン兵器の使用禁止、アフガンやイラクで攻撃された目標での環境調査、一九九一年以降のウランに汚染された市民や兵士の健康調査、汚染地域への援助」などを直ちに実施することを訴えた。

イラク最新調査も報告

 続く証言は、六月上旬にイラク現地調査から帰ったばかりの藤田祐幸慶応大学助教授。

 「コソボに行ったときは、劣化ウラン弾の痕跡はすぐには見つからなかったが、イラクでは容易に見つかった。かなり使われたという印象を受けた」と語る藤田さんは、政府機関の建物周辺からも多数の破片が見つかったことを紹介した。物理学者の藤田さんは各地で放射線を測定。劣化ウラン弾の破片一発で、通常の約百倍の放射線量を検出したことを報告。「人体にすぐに影響する値ではないが、長期的に見れば健康被害が懸念される」と指摘した。

 この他にも、被爆者の立場から全国原爆被爆教職員の会の石田明会長が「原爆被害と国際法違反について」と題して証言を行った。

 まとめに立った広島公聴会実行委の呼びかけ人の一人、横原由紀夫さんは「ブッシュが憎いからだけで公聴会をしているわけではない。人類がつくりあげてきた国際法を遵守する秩序を取り戻すために、私たちは民衆法廷を開催しているのだ」と締めくくった。

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