2003年06月27日発行794号

【シベリア抑留者が提訴 韓国人の元軍人軍属裁判二次提訴 強制労働に対する国家補償求める 日本の抑留者も激励】

 シベリア抑留被害者三十一人(一人は遺族)を含む韓国人の元軍人軍属ら百六十四人が六月十二日、日本政府を相手に未払い賃金の支払い、靖国合祀の絶止などを求め、東京地裁に提訴した。シベリア抑留をめぐる韓国人の提訴は初めて。日本政府が謝罪と補償を認めない限り、国際的批判は高まり、闘いは続くことを示すものだ。

記者会見する韓国人シベリア抑留者(6月12日)
写真:シベリア抑留者に未払い賃金を早く支払え!との要求を日本語と韓国語で書いた横断幕を背に記者会見する原告と弁護団など

 今回の提訴は、二〇〇一年六月の第一次提訴(二百五十二人)に続くもの。第二次の原告となった韓国シベリア朔風(さくふう)会会長の李炳柱(イ・ビョンジュ)さんら三人が来日した。

 シベリア抑留は、一九四五年八月、ソ連軍の捕虜となった日本軍兵士六十五万人が酷寒の地シベリアで強制労働させられたもので、六万人が死亡したといわれる。その中に朝鮮人三千五百人が含まれ、死亡者は千二百人に及んだ。抑留中の賃金は日本人にも朝鮮人にも未払いのまま。今回の提訴では、未払いの賃金は所属国が支払うよう定めたジュネーブ条約などを根拠に、約三億円の未払い賃金と、謝罪を求めた。

 李会長は提訴にかける思いを「私たちはこれまで、ジュネーブの国連人権委員会に二回訴え、小渕元首相にも補償を要求したが、実現していない。日本での戦後補償裁判は数十件あるが、ことごとく敗訴している。今回、総会を開き、最後の炎を燃やす覚悟でやってみようという意見になった」と語った。

 また、有事法制について、「ノ・ムヒョン大統領が訪日したその日に有事法制が成立した。侮辱的だ。韓国では、軍国主義が復活する法だと見ている」と批判。今提訴が、日本の戦争国家づくりに足かせをはめる運動でもあることを浮かびあがらせた。

日韓の被害者が連帯

 提訴には、日本のシベリア抑留者団体・全国抑留者補償協議会(全抑協)の人たちが岐阜や福岡から駆けつけ、原告を励ました。

 全抑協は一九八一年、強制労働に対する国家補償を求め提訴。九七年、請求棄却の最高裁判決が出されたが、その後も、立法化をめざし運動を展開。昨年十一月と今年五月には国会前で座り込み、現在、法案提出の準備中だ。

 全抑協副会長で福岡県連合会長の下屋敷之義さんは「働いた以上は賃金が支払われ、それを受け取るというのが、社会の基本的成立要件。政府は私たちに、解決済みとして、奴隷制を容認した。絶対に許すことはできない。提訴は日本の“朔風”会である私たちの闘いでもある。ともに勝利まで闘う」と力強く語った。

 日韓の同じ被害者が連帯したこの闘いは日本政府を追いつめる。

ホームページに戻る
Copyright FLAG of UNITY