2004年01月23日発行823号

第2次カイロ宣言(全文)

【パレスチナとイラクのレジスタンスと共に資本主義のグローバリゼーションと米国の覇権に反対して】

 第2回カイロ会議が2003年12月13、14の両日、「パレスチナとイラクへの侵略に反対する民衆運動」の呼びかけで開催された。国際的な著名人、政治・労働運動活動家、知識人、作家、ジャーナリスト、芸術家、人権活動家ら広範な人々がアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アメリカ合衆国など世界各地から、そしてアラブ世界から、参加した。資本主義のグローバリゼーション(地球規模の拡大)と米国の覇権、シオニズム(注1)、人種差別に反対する共通の闘いと、「よりよい世界は可能だ」という枠組みのもと資本主義のグローバリゼーション政策に対抗する、より人間的で公正なオルタナティブ(別の選択肢)を探求する共同の取り組みが結集した。

 われわれは資本主義のグローバリゼーションに反対して闘っている。その政策が、先進国と途上国間の格差の深化、人々に対する搾取と抑圧の増大、最低限の生活手段さえ手に入れられない世界の広範な階層の人々の切り捨て、戦争や軍事化に訴えることによる人々の安全保障への脅威といった結果をもたらしているからである。これらすべては、国際的には帝国主義の強化、国内的には従属の強化に行きつく。それはまた、アラブの土地を支配しようとするシオニストの計画を、世界および中東地域における帝国主義プロジェクトの拡大として後押ししている。

 第2回カイロ会議の参加者は、2002年12月に行われた第1回カイロ会議で到達した結論と確信が、活発で効果的な地球規模の運動の基礎になったと見ている。この運動は、広範囲に及ぶ民主的で平和を愛する反戦・反侵略グループの参加を得て世界に広がり、イラク侵略を拒否しパレスチナへの連帯を表明する反グローバリゼーションの国際会議の組織化や、そこから発せられた東京宣言・ジャカルタ宣言のような宣言、イラク民衆との連帯行動日の設定へと発展した。こうした経過の中で、世界のすべての国で何百万という民衆のデモが見られるようになった。その最大のものが、2003年1月18日と2月15日のデモである。世界中のさまざまな国で、アメリカのイラク侵略を非難し、シオニストの侵略とイスラエルの占領に反対するパレスチナ人民の闘いを支援する民衆の会議が組織された。

 これら民衆の広範な行動と活動は、米国によるイラク占領を阻止はしなかったが、その開始の直後から占領を非難し、世界が一致して占領を拒絶する意思表示をつくり出すことに成功するとともに、多くの国々に占領加担を拒否させるインパクトを与えた。これらの運動によって、米国は幅広い国際的な同盟を築けなくなった。この国際的な民衆運動はまた、イラク侵略への態度をめぐる主要な資本主義国間の対立を深化させてきた。国際的大衆運動の活動は、グローバリゼーションとその軍事化の政策、民衆の利益と人類の未来を脅かす危険性に反対する闘いに代表される共通の戦略目標の枠組みの中で、民衆のグループ・諸勢力を継続的に結集することに成功している。ポルトアレグレ(注2)は、あらゆる場所での反人民的侵略政策とそれが引き起こす問題を非難する民衆の共同闘争が、どのような成果を生み出すことができるかという明確な成功例であった。

 これらの到達点に基づき、資本主義のグローバリゼーションと米国の覇権に反対する一層有効な闘いをめざして、第2回カイロ会議は、1年間の活動から教訓を引き出し、来たる年においてより効果的な対決を準備するために、この闘いに関連する重要課題について討議した。討議のテーマは、米国の覇権と資本主義のグローバリゼーションに対するレジスタンス(抵抗運動)、パレスチナとイラクのレジスタンスを支援する手段と方法、レジスタンス支援とアラブ世界の民衆の取り組みが直面している課題の克服に向けたアラブと世界の民衆運動の役割の強化、などであった。

 討議は次の基本的結論に到達した。 1 資本主義のグローバリゼーションと米国の覇権について

 第2回カイロ会議の参加者は、米国が、世界経済に対する支配を強め強大な軍事力を使用することにより、また米国の影響と力の増大を損ないかねない多極的な世界の再構築を妨害しようとすることにより、世界に対する支配力を強化する試みを続けると分析した。したがって、資本主義のグローバリゼーションと米国の覇権に反対する国際運動はその傾向に挑戦することが重要である。それは以下のような傾向である。 −アフガニスタンに加えアラブ世界や中欧・東欧のような世界の新しい地域における米国の軍事的プレゼンス(駐留)の強化と拡大。これは世界の民衆への直接的脅威となる。 −自由貿易協定や条件付き借款・援助、国際金融通貨政策といった枠組みの中での世界経済への一層の支配と国際経済関係の再編、そして正義の実現と先進諸国の発展を両立させ得る新世界経済秩序の確立を念頭においたこれまでの傾向とは反対の新たな関係の創出を実現するための資本主義の国際機関の利用。 −国連の反対にもかかわらずイラク戦争の開始に米国が固執したこと。戦争を合理化させるために国連に対して加え続けた圧力や、イスラエルによるパレスチナ・シリア・レバノンへの侵攻の非難を試みたあらゆる安全保障理事会決議の妨害。これらは、民衆の利益に反して国際的正当性を明らかにゆがめ、国際的規範において国連憲章に相反する二重基準をつくり出すものである。 −民衆にアメリカ型民主主義モデルを押しつけ、アラブ世界において偽りの民主主義モデルを擁護すること。これは、社会的内実と民族主権および人民自らの意思に由来する政治的自由と権利の承認に体現される真の民主主義の最も基本的な特徴を無視している。この誤った民主主義の提案を利用してアラブ諸国に人種差別的シオニスト政体(イスラエル、注3)の正当性を認めるよう強要し、中東地域におけるそのリーダーシップ的役割を受け入れさせ、新自由主義的グローバリゼーションの政策を甘受させること。 2 占領に反対するパレスチナの英雄的インティファーダについて

 第2回カイロ会議の参加者は、パレスチナ人民の大義は、1917年にバルフォア宣言(注4)が発せられ、1948年にシオニスト運動が進めた人種差別的な入植・移住の植民地主義政策によってアラブ・パレスチナ人の土地が奪われたことに端を発したと認識する。この政策は1967年、アラブ国家に対するシオニストの引き続く侵略拡大の結果、残りのパレスチナの土地と他のアラブ諸国の一部が占領されたことにより、完成した。われわれは、他のすべての宗教と同様に尊重されるべき宗教としてのユダヤ教と、拡張主義のシオニスト政治運動としてのシオニズムとを区別する一方、非武装のパレスチナ民衆に対するイスラエルの侵略政策を非難する。とくに以下のような政策である。 −国家の要人や指導者の暗殺、何千人ものパレスチナ人活動家の拘束、レジスタンス殉教者の家屋の破壊、居住地への襲撃と市民に対する無差別発砲を通して、土地の略奪と占領に反対するパレスチナ人民のレジスタンスを解体すること。 −パレスチナ人民に降伏を迫り、パレスチナ人民のあらゆる正当な民族的諸権利、とくに帰還の権利(注5)と国連決議194(同)の実現を認めないシオニスト政体が押しつける政治決着を受け入れさせること。これは、レジスタンスの解体、インフラ(社会基盤)と公共サービスの破壊、パレスチナ民衆の日常的苦痛の増大、生活条件の悪化、農作物の破壊、1967年以降の占領領土における人種差別的隔離壁の建設、さらにパレスチナ人をその土地から根絶することをめざした民族浄化を通して進められている。 −イスラエルの占領に対する米国の無条件の支援に依拠し、入植地の継続的な建設と1967年以降占領された土地の大半の併合を通して占領地における新たな現実をつくり出す意図のもとに決定的な変化を押しつけること。

 参加者は、パレスチナ人民のインティファーダ(民衆蜂起)と、自らの土地を解放するために軍事的闘争を行う権利を含むあらゆる手段を行使して占領に抵抗するパレスチナ人民の権利、およびオスロ合意(注6)に始まりジュネーブ文書(注7)に至る、自らの民族的要求を実現しない政治決着の試みを拒絶する彼らの権利を全面的に支持し、連帯することを強調する。 3 イラクの反占領レジスタンスについて

 第2回カイロ会議の参加者は、イラク占領が、世界に対する米国の力を一層拡大することを目的に自らの世界支配を強化しようとする米国の戦略プランの一環をなすことを強調する。それはまた、シオニストの計画の一環でもあり、この計画はナイル川からユーフラテス川に至る大イスラエル国家の建設、イラク占領におけるイスラエルの直接的役割の確立、イラク駐留アメリカ軍によるイスラエル兵器の使用を目標としている。そこにおけるアメリカの狙いは以下の通りである。 −イラクを支配し、それによって旧世界の中心部に影響を与える戦略的地域における直接的軍事プレゼンスと世界の石油生産・流通に対する一層の支配を確実にすること。 −中東地域を米国の利益に奉仕するように再編すること。そのために、イランを取り込み、シリアに服従を強い、帰還の権利を含むパレスチナ人民の民族的諸権利の総体を無視するパレスチナ問題の政治決着を押しつけること。 −国際的独占資本に利益をもたらし、アラブのアイデンティティー(独自性)を犠牲にして米国の戦略目的に奉仕する文化様式を拡大するために、この地域における指導的役割をイスラエルに与える中東プロジェクトを復活させること。さらに、この目的を後押しするために中東自由貿易圏を設けるよう米国から圧力をかけること。 4 帝国主義と資本主義のグローバリゼーションに反対する国際的な統一戦線を支える闘いをめざして

 第2回カイロ会議の参加者は、討議テーマに関して到達した結論と事実が、帝国主義と資本主義のグローバリゼーション、米国の覇権に反対する国際的な民衆の統一戦線の構築に向けて引き続き闘う意志、この戦線の活動を全世界に広げる意志、より広範な民衆の集団を包み込むさまざまな行動を年間を通して継続的に行うことをやり遂げる意志を強固にしたことで意見の一致を見た。民衆の基本的利益と資本主義のグローバリゼーション政策との間にある対立への認識が深まったことから、目的を達成するために以下の方針に取り組む。

1−資本主義のグローバリゼーションに対する闘いを継続し、民衆の利益を保障し、より人間らしく公正な条件に基礎を置く国際経済関係の分野で資本主義のグローバリゼーション諸政策に代わる現実的なオルタナティブを提案する。

2−総体としての全面軍縮と、核兵器が人類の未来に負わせる危険性に照らして世界的な核軍縮、とくにイスラエルの核兵器の武装解除を通した中東における核軍縮を呼びかける。

3−グローバリゼーションと外国支配に反対する民衆の闘いが十分効果を発揮できるよう、民主主義の重要性を強調する。これは、自由と基本的人権を享受する民衆の権利、および強力な市民社会と自由で民主的なマスメディアを基盤とした効果的な民衆運動の構築を呼びかけるものである。会議参加者は、民主主義とは社会的内実を持ち、国の富の公正な分配を実現し闘う階級の利益が守られる社会、民族主権の枠組みの中で国家の有効な役割を求める社会であることで意見の一致を見た。

4−全世界の民衆運動・グループとの連携の重要性を強調する。その中には、帝国主義・シオニズム・人種主義に反対して闘い、アメリカ人民の真の利益を脅かすアメリカ独占資本やネオコン(新保守主義)米指導者の行為に挑戦しているアメリカの諸組織も含まれる。会議参加者はまた、世界を脅かし続ける支配勢力を機能麻痺させる、ベトナム戦争時の役割に似たアメリカ人民の果たす役割の重要性を強調した。

5−外からの侵略に対するレジスタンスの正当性、そうした侵略に抵抗する民衆の権利の正当性を強調する。

6−イラク民衆および、軍事的闘争を含むあらゆる正当な手段による占領軍への彼らのレジスタンスとの連帯を継続し、自らの正当性をイラク国民からではなく占領から得ている暫定統治評議会に国内的な基盤を置いたアメリカの計画を妨害するイラク民衆を支援する。この評議会が承認されていないこと、われわれがアメリカとイギリスの占領の終結を求め、イラク民衆とその民族的諸勢力によって定められる民主的基礎の上に立ったイラク国家機関の再確立に向けて取り組むことは重要である。

7−パレスチナ民衆との連帯を継続する。独立した完全な主権を持つ民族国家を樹立する権利を保障し、パレスチナのインティファーダおよび武装闘争を含むあらゆる手段で占領に抵抗する権利を支援するためである。

8−中東プロジェクトの真の目的に立ち向かう国際的な大衆運動を呼びかける。このプロジェクトは、米国の政策を利する中東地域の再編成、つまり民主主義の誤ったモデルを、実際にはアラブのアイデンティティーを解体し、消費至上主義の文化を広め、この地域における「イスラエル」の指導性を受け入れさせ、資本主義のグローバリゼーションの諸条件への服従を強いるために、押しつけるものである。

9−グローバリゼーション政策に反対し、パレスチナとイラクに連帯する国際的な民衆レジスタンス運動を組織する。世界に広く認められる一定の日に共に行動する。中でも、

−パレスチナ・イラク民衆のレジスタンスに対する国際連帯の共同行動日を明らかにする。とくに、イラク侵略の日である3月20日、パレスチナ人民のインティファーダ開始の日である9月28日をその日とする。

−グローバリゼーションへの挑戦、パレスチナ・イラク民衆のレジスタンスを、2004年1月インドのムンバイで開かれる会議などの国際的な会議の議題として取り上げる。

−不法な裁判にかけられている良心囚(政治囚)やレジスタンス支援者、反グローバリゼーションの活動家への連帯を表明し、彼らの即時釈放を求める。

−すべての反民主的状況を、とくにアラブ諸国において終わらせること、何よりも戒厳令、特例法廷、政治運動・大衆行動に課せられた規制の撤廃を求める。

−アメリカのイラク侵略に加担し助長したアラブ諸政権、イラクの反占領レジスタンスに対する彼らの消極的態度を非難する。アラブ諸政府に対し、国内にあるすべての米軍基地の閉鎖を要求する。

−侵略を支える占領国・機関に対するボイコットを呼びかける。

−あらゆる分野におけるシオニスト政体との関係正常化を拒否し、この政体を文化的・政治的・経済的にボイコットする世界のさまざまな国のすべての民衆組織の立場を支持する。

−国連がシオニズムと人種主義を同一と規定する決議を再採択するよう、世界のすべての民衆組織がこの決議を広く採択するよう、運動を組織する。

−ジョージ・ブッシュ、トニー・ブレア、アリエル・シャロンを戦争犯罪人として裁く民衆法廷を世界のいくつかの個所で組織する。

10−組織委員会は各地域および国際的諸団体と共に、第2次カイロ宣言に基づいて、資本主義のグローバリゼーションに反対しイラクのレジスタンスとパレスチナの英雄的インティファーダに連帯する民衆運動の活動を実行に移していく責任を負う。

2003年12月14日 カイロ


(注1)シオニズム

 エルサレムにあるユダヤ教の聖地「シオンの丘」へ戻ろうという意味から生まれた、ユダヤ人国家の建設をめざす排外主義的運動とその思想。

(注2)ポルトアレグレ

 2001年から2003年まで、世界経済フォーラムに対抗して世界社会フォーラムが開かれたブラジルの都市。世界社会フォーラムには、グローバリゼーションに反対する世界のさまざまな民衆運動が結集している。  

(注3)シオニスト政体

 原文は“Zionist entity”。イスラエルを指す。パレスチナ人を追い出し、その土地を略奪することによって成立したイスラエルを国家として承認しないとする人々によって広く使われている。

(注4)バルフォア宣言

 1917年に英国のバルフォア外相がシオニストに与えた、パレスチナの地でのユダヤ人国家建設への同意。

(注5)帰還の権利

 イスラエル建国に伴って難民となったパレスチナ人が、イスラエル領内(元の居住地)に帰還する権利。1948年に国連総会で採択された決議194は、パレスチナ難民の帰還の権利と帰還しない難民への補償を認めている。

(注6)オスロ合意

 1993年9月にパレスチナ解放機構のアラファト議長とイスラエルのラビン首相との間で結ばれた、ヨルダン川西岸とガザ地区を対象とするパレスチナ暫定自治に関する合意。

(注7)ジュネーブ文書

 スイス政府などの仲介により、パレスチナ自治政府のラボ元情報相らとイスラエルの野党左派勢力が2003年10月に基本合意した中東和平案。

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