2005年06月03日発行889号

【辺野古移設を見限った米国議会 普天間は撤去しかない】

 5月5日、米国連邦議会の「海外基地見直し委員会」は中間報告書をまとめた。

普天間基地の米軍ヘリが激突した跡形が残る校舎(沖縄国際大学)
写真:校舎の壁に残る激突の跡

 報告書は、普天間基地について、嘉手納基地か山口県・岩国基地へ統合すべきとした。また、「沖縄は東アジアの戦略的な拠点で、兵力を削減することは米国の国益に多大な影響を与える」とのべ、普天間基地以外の海兵隊はすべて沖縄に駐留すべきだとしている(5/6沖縄タイムスほか)。

 「辺野古沖移設」については、この米国議会公式文書に記述すらされていない局面であることが改めて明らかになった。クリントン政権下の国防副次官補時代に在日米軍基地の整理・縮小案をまとめた米戦略国際問題研究所のキャンベル上級副所長も「名護市辺野古沖への移設はもはや戦略的に意味をなさない」と明言している(5/16日経)。

 だが、あくまで駐留継続・県内移設を狙う報告書に沖縄県の地元各自治体は直ちに反発した。

 嘉手納基地を抱える3市町の首長は強く反対を表明。「なにがあっても反対の姿勢にゆるぎない」(宮城嘉手納町長)、「海兵隊は県外か国外への移設が望ましい」(仲宗根沖縄市長)、「基地の更なる強化につながり、周辺地域への基地被害が増加するのは必至」(辺土名北谷町長)。

 米国議会の動きとは別に、日米両政府が調整中の嘉手納基地への統合にも、滑走路新設場所とされる嘉手納弾薬庫地区の周辺自治体はそろって反対だ。

日米共同の戦争体制整備

 これらの動きは米軍が全世界規模で進めているトランスフォーメーション(再編)の一環だ。

 アジア・ヨーロッパに展開する米軍20数万人の内、6万〜7万人を削減する。巨額の財政赤字の下で、民間軍事企業を活用しながら、スリム化・ハイテク化した部隊を米・グローバル資本の権益のあるところ世界のどこへでも速やかに展開できるようにするためだ。沖縄をはじめとする在日米軍については、部分的な削減と引き換えに、中国・アジア全域を見すえた再編強化が狙われている。

 米国にとって、日本政府は駐留経費をいわゆる「思いやり予算」で肩代わりしてくれる大切な金づるだ。在沖米軍分だけでも79年〜05年までの26年間で5343億円もの経費を日本が支出し、ここ5年間では、1年あたり627億円にまで膨れ上がった(4/27 沖縄タイムス)。

 口先では「沖縄の負担の軽減」といいながら、小泉の本音も、在日米軍基地機能強化だ。米国と共同歩調をとり占領国となった日本は、自衛隊の米軍との連携を深め、ともに「国益」=グローバル資本の権益確保のための戦争を戦い抜こうとしている。

ノー突きつけた沖縄県民

 このような米軍再編・統合は問題の解決にならず、沖縄県民ははっきりとノーを突きつけている。

 5月15日、普天間基地は、2万4000人の市民に包囲された。普天間包囲行動は、95年、98年、04年に次いで4回目。2年連続の開催で、しかも過去最高の参加者を記録したことは、県民の怒りの大きさを示している。包囲行動後の県民大会決議には、昨年は入らなかった辺野古移設断念がはっきりとかかげられ、普天間基地の即時閉鎖・撤去、嘉手納基地等への統合・移設計画撤回を要求。辺野古での防衛施設庁によるボーリング調査強行の動きも強く批判した。

 辺野古現地では、新基地建設反対の座り込みが1年以上続けられ、24時間体制の海上阻止行動が取り組まれている。本土でも抗議の集会・デモとともにIUCN(国際自然保護連合)勧告実現を求める署名を力に、国会決議実現を求める院内集会が取り組まれている。

 嘉手納基地移転を検討せざるを得なくなったのも、これらひとつひとつの闘いの前に辺野古の基地建設が一向に進まないからだ。そして、嘉手納移転はSACO(日米特別行動委員会)協議で一度は放棄された案であり、県民の怒りに火を注ぐものだ。普天間を含む在日米軍基地は撤去しかない。

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