2005年06月10日発行890号

未来を築けイラク自由会議とともに MDS国際連帯のつどい

【衝撃与えたIFC誕生】

IFC(イラク自由会議)サミール・アディル議長

写真:

 IFCとイラク民衆を代表して感謝の言葉を述べたい。特に、MDSがイラク民衆の声を伝え、真実を明らかにしていることに感謝する。

 1月の暫定国民議会選挙の前と後を比較しよう。自殺爆弾は昨年1年間イラク全体で21件だったが、今は先月1か月のバグダッドだけで26件もあった。裁判を受けずに投獄されている人が1万7千人いる。日々民族紛争が起き、スンニ派やシーア派の民兵が市民を殺している。先月、バグダッドのある地区で41人の理髪師や仕立屋がシーア派武装集団に殺された。石油産出地のキルクークでは、クルド民族主義者がアラブ系住民を殺し、アラブ民族主義者が罪もないクルド人を襲っている。これが選挙後の現実だ。

 ブッシュは選挙を「世界の民主主義の勝利」と言った。しかし、現実はイラク社会をシーア派、スンニ派、クルド人、アラブ人、トルクメン人といった民族や宗派で分断してしまった。人間としてのアイデンティティが失われた。昨日まで何十年も宗派の違いなく共に暮らしてきた隣人同士が、今は互いに恐れ、疑い合う事態になっている。

 イスラム政党は衛星放送の討論番組で「選挙で勝った。国民はイスラム教に基づく社会のあり方を受け入れなければならない。政教分離の政府を求める権利はない」と主張した。私の答えは、イラク社会は政教分離した社会だ、ということだ。市民の頭に銃口を突きつけ「われわれに投票しろ。さもないと殺すぞ」と脅して多数派を取ったにすぎない。私は「歴史が証明している。ヒットラーも選挙で選ばれたが、ドイツ国民は正しい選択をしたというのか」と言ってやった。

 現在の政府は、アメリカによって設立され、イスラム主義勢力とクルドおよびアラブの民族主義勢力によって占められている。民族紛争を生み出すだけで、何の展望もない。

 このような人間性の破局というべき危機から脱け出すには、占領を終わらせ、民族主義ではない政教分離の政府を樹立しなければならない。

 そのために3月19日、非民族主義・非宗教の民主的な大衆組織の結成を宣言した。それがイラク自由会議(IFC)だ。綱領は世界人権宣言に基づいている。占領とイスラム政治勢力の介入を終わらせる唯一の展望となる。

内外で広がるIFCへの支持

 IFCには様々な地域の多くの組織が参加している。国内の呼びかけ人は、イラク労働者評議会労働組合連合(FWCUI)やイラク女性自由協会(OWFI)、イラク労働者共産党の代表、バグダッド大学やバスラ大学の教授、芸術家、地方都市の代表らだ。

 結成の記者会見にはアラブ諸国や世界のメディアが来た。メディアはその後、内務省に取材に行き「IFCは政府にとって脅威になるか」と聞いている。政教分離政府をめざす組織の誕生に内務省はショックを受けたようだ。

 メーデーの日、スレイマニアではマラソン大会を行なった。人間らしい生活の展望を示したかったからだ。バスラではホームレス協会がIFCに加盟している。5月17日にバスラで開いたIFCの大会には450人が参加し、80人が加入した。集会参加者の多くは女性で、これがIFC運動の特徴だ。

 IFCの代表は各地で宣言を配布し、演説し、IFCへの参加を呼びかけている。安全を回復し、自由を手にし、社会生活を取り戻したいならIFCへ、と。

 冗談のような話がある。バスラの少数派スンニ派のイスラム党がIFCに加入したいと言ってきた。シーア派の攻撃から守ってもらいたい、というのだ。われわれは「お前たちは米軍とイスラム主義者による暗黒のシナリオの一翼を担っている。個人としてならいいが、政党としての加入は断る」と答えた。結成わずか2か月のIFCがいかに人気があるかを示すものだ。

 国際的にも、IFCへの支持拡大のためのキャンペーンに7月まで取り組む。欧米の左翼の間では以前はイスラム主義者のテロを正当化する傾向が強かったが、IFCの結成以降、政教分離の運動への支持が展望のある選択肢として広がってきている。アメリカではワシントンやニュージャージー、オクラホマの大学で講演会を開き、IFC委員会の組織化が進んだ。イギリスやフランスでは数百人単位の加入がある。ガーディアンやBBCの取材も受けた。一方、シリアやパレスチナなどの共産党にも働きかけているが、現政府に加わるイラク共産党を支持しており、支援は得られていない。

バグダッドで本部開設へ

 6月10日にはバグダッドにIFC本部を開設する。

 私たちの問題は、財政だ。支配政党は占領国の支援で衛星テレビや日刊新聞を持っている。私たちにはローカルラジオ局はあるが、すべての家庭に情報を伝えるために衛星ラジオ局を開設したい。ぜひ財政的支援をお願いする。

 大きな国際連帯の戦線を築きたい。その時、イラク民衆の勝利が勝ち取れる。南アフリカの反アパルトヘイト闘争は南ア国内の力だけでは勝てなかった。国際連帯の運動の結果だ。人間を信じる人はすべてIFCに加わってほしい。イラクでアメリカの支配を打ち破ることができれば、それはイラクだけでなく世界で平和が、人間性が勝利することを意味する。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS