2005年06月10日発行890号
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【No.11 「1分半遅れで107名が命を落とすなんて…」 鉄道再国有化へ全国キャラバン】

北から南からロンドンへ集結

 中野勇人さんが国鉄闘争勝利を訴えてランニングキャラバンをやりきった4月、英国でも全国キャラバンが実施された。その名はRAP(鉄道民営化反対)。鉄道労組RMTによる組合総力のキャンペーンだ。

 イギリスを北から南へと縦断しながら14の主要都市でデモと集会を積み重ねた。全国の支部から集まった25人の組合員が、RAPの旗を掲げそのすべての先頭に立った。「鉄道民営化反対!」「民営化?ふざけるな!」と語る巨大な広告トレーラが後に続いた。各都市ごとに、その地方のRMT組合員、各種労組の活動家や支援者が参加した。

 「機動デモ」は4月16日にグラスゴーを出発し、4月30日、尼崎事故の5日後に終点のロンドンに到着した。このロンドン集会に筆者も参加する機会を得たが、話をした組合員たちはみな尼崎事故を知っており、口々にひどい事故だ、英国と同じだ、と語っていた。

 後日、25人のマーチャー(デモ隊)の1人、ロズリン・フォンさんにインタビューをする機会を得たので、ここに紹介したい。ロズリンさんは英仏間鉄道ユーロスターのウォータールー駅切符窓口勤務で、RMT職場代表(レップ)を務めている。

「失敗した民営化は安全の反語」

 「RAPキャンペーンでは、どこに行っても素晴らしい支援を受けました。本当に多くの人がデモに参加してくれました。リバプールでは炭鉱労働者たちと会いました。彼ら自身サッチャー時代から激しく闘って来ましたから、私たちの苦闘をよく分かるわけです。私たちは、RAPを通じて世論を喚起し、再国有化がなぜ必要なのかを訴えました。

 国有だと経済的負担が大きいと言う人もいますが、事実は逆です。いま毎年8億ポンドものお金がプライバティア(民営主義者・略奪者)の懐に消えています。控えめな試算でさえ、鉄道再国有化で毎年5億ポンドの節約になるのです。

 2年半前、鉄道運輸を再国有化する、と労働党政府は言いました。今、2つの民営会社の営業権が更新時期を迎えています。政府が望めばいつでも契約を破棄できます。ここで契約更新をストップできれば、13年までには大半の鉄道の再国有化が可能なんです」

 「事故の度に運転士個人を責める論調が持ち上がるのは英国も同じです。でもサービスを細分化し、事故の原因を作ったのは民営化です。民営化は完全な失敗でした。経営陣と会社のトップこそが責任を負わねばりません。今では民営化は安全の反語です。

 欧州の法制度では、15分までは遅れと見なされません。今回の日本の事故のように、1分半の遅れのために107名が命を落とすなんてとんでもないことです。優先されるべきは乗客乗員の安全であって利益ではありません」

組合員の声を聞く労働組合に

 「大切なのは組合リーダーシップ(指導部)です。組合執行部の本分とは、組合員の声を組合政策に活かすことです。組合員の声を聞かないような組合など必要ありません。ユーロスターでは入社が決まると『この組合に入れ』と言われ御用組合TSSAに入ることになります。私も入りました。でもそこが組合員を守る組織じゃないと気付いたとき、私はRMTに移り組織化を開始しました。RMTでは争議に立てば書記長自身が駆けつけてきます。私は女だし若輩ですが、絶望しませんでした。ストをしたり切符売り場の同僚たちに働きかけました。数か月後には皆、私の味方になっていました。1年半前、職場のRMT組合員数は294名でした。今、950名です。どんな小さな不満でも、あらゆる不満を取り上げて、皆に働きかけることが大切です。団結が鍵です」

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