2005年06月17日発行891号

【891号主張 / 前進するイラク自由会議 / 人間復権の闘い】

イラク市民の希望

 イラク自由会議(IFC)のサミール・アディル議長が来日し、前進するイラク市民レジスタンス運動の息吹を伝えてくれた。占領終結・政教分離政府の樹立をめざすこの闘いとの連帯の中に反戦運動の展望があることが一層明らかになった。

 「日本の鉄道事故の犠牲者は献花を受け、黙祷を捧げられている。一方、イラクではそれと同じ数の人が毎日殺されているのに誰も関心を払わない。死者の数が報道されるだけだ。イラク人は人間であるに値しない存在だとでもいうのか」。サミールさんはイラクで進行する事態を“人間の破局”と表現した。

 破局に終止符を打とうと結成されたのが、IFCだ。IFCは、民族・宗派の分断の上に立つ移行政府とは正反対に、イラク社会を人間としての共通のアイデンティティで結びつける。「占領にノー、テロリズムにノー、民族紛争と人種差別にノー、イラクの自由にイエス」をスローガンに、破局からの脱出の道をイラク市民に指し示している。

民主主義の力で

 IFCの存在はすでにイラクの社会と政治の中に深く根づいている。バスラの闘いの勝利がそれを証明する。

 サドル派民兵による学生殺害に抗議する闘いが内外の支援を集め、同派に謝罪を表明させたことは知られている。今回サミールさんから新たな情報がもたらされた。

 一つは、サドル派の暴挙に怒る学生たちの間には当初、武力での反撃を主張する声も強かったことである。これを市民レジスタンスの学生活動家が説得し、無期限ストと内外への支持呼びかけという非武装・非暴力の手段で抗議行動が組織された。「学生の問題から社会全体の問題に発展させたことが重要な点だ」とサミールさんは指摘する。

 もう一つは、謝罪に加え学生たちの受けた精神的物質的被害への補償とサドル派勢力の学内委員会の解散をかちとったことである。IFCマニフェスト(政策綱領)の「当面の目標」第2項「イスラム主義勢力の武装集団の解散・武装解除」が実現に一歩近づいたことを意味する。

 バスラの学生と市民は、非武装・非暴力の闘いで武装勢力の居場所をキャンパス内からなくすことに成功しつつある。テロを封じ込める力は、軍事的手段ではなく、自覚した市民の政治的社会的行動にあることを実証してみせた。

連帯委を広げよう

 IFCは目的の一つに「イラクに市民生活を取り戻す」ことを掲げている。メーデーでは、その一環として様々な取り組みが行われた。スレイマニアではマラソン大会、キルクークではクルドのダンス…。「メディアがイラクを復古的なイスラム社会として描き出すのは誤り。市民社会を再建する展望はある。そのことを示したかった」とサミールさんは報告した。

 市民レジスタンスは、占領が奪い去った人間として当たり前の生活、当たり前の権利を取り戻す闘いである。だから「人間を信じる人はすべてIFCに加わってほしい」とサミールさんは訴えている。

 武力による支配を拒否するイラク市民との連帯が、自衛隊撤退闘争の確信をつくる。市民レジスタンス連帯委員会を広げよう。 (6月6日)

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