2005年06月24日発行892号

【892号主張 / 事故の責任隠す「安全性向上計画」 / 元凶=民営化の追及を】

反省なきJR西日本

 5月31日、JR西日本は「安全性向上計画」を発表した。JR福知山線の新型自動列車停止装置(ATS−P)の設置も進めてきた。すべては、運転再開の既成事実化で事故の真の責任を不問に付すためだ。国土交通省は、5月末時点で「6月中旬再開」にお墨付きを与えた。あとは「被害者も理解」との形をとりつくろい、6月19日にも運転再開を強行しようとしている。

 しかし、この「安全性向上計画」は、今回の事故についてどう総括しているのか。「発足当初から安全を前提とした収益の確保と効率化に取り組み…」「安全を優先するという意識の徹底に努めたが、組織の隅々にまで浸透するに至らなかった」「現場の管理者に教育・指導を任せていた」―。要は、経営方針やトップは悪くない、悪いのは「支社」「現場管理者」であり「社員」だと言っているのだ。

 そこには原因の真摯な分析も反省もない。利潤最優先、安全無視の民営化路線を徹底してきた経営陣の刑事責任追及を含む真相の徹底究明こそが問われている。

人権回復・解雇撤回は一体

 今回の事故の1次的な原因は、遅れを回復しようとした運転士が制限速度を大幅に超えるスピードを出したこととされるが、その背景もほぼ明らかになっている。民営化以前の4倍もの電車を走らせ余裕時分ゼロ運行が3割という超過密ダイヤ、「日勤教育」に象徴される命令・服従・人権無視の労務管理、などだ。

 これに対し、「安全性向上計画」に並べられた安全教育の徹底、ATS設置、過密ダイヤ緩和などの措置で事故再発は防げるのか。防げない。

 事故の根本原因である民営化にメスを入れることが徹底して避けられているからだ。労働者が自由にものも言えず、服従を強いられる労働現場を放置する限り事故はなくならない。そして労働者の人権回復は1047名の解雇撤回ぬきにはありえない。

 政府・JRは、追及が民営化に向かうことをおしとどめ、小手先の「安全対策」で幕引きを狙うが、被害者からは痛烈な批判を浴びている。

反民営化の国際連帯を

 JRは口を開けば「株主様の利益」を言う。その一方で公共輸送機関としての使命は放棄され、安全輸送第一は投げ捨てられた。その結果が今回の事故であった。民営化は破綻したのである。

 それは日本に限ったことではない。同様に鉄道民営化を強行したニュージーランド・英国でも事故が多発し、国民の財産が食い物にされた。両国民は民営化にノーを突きつけた。ニュージーランドでは昨年鉄道が再国有化され、英国でも具体的日程に上っている。英国では現在、鉄道労組RMTが鉄道再国有化へ全国キャンペーンを展開し、民営会社の営業権更新を政府に破棄させる闘いを進めている。

 民営化された鉄道の再国有化は国際的な流れとなっているのだ。日本においても福知山線事故の原因究明と責任追及を民営化見直しへと結びつけていく必要がある。

 7月には、英国RMTが来日する。真相究明を求める被害者、解雇撤回を求める原告団そして市民が一体となり、反民営化の国際連帯をつくりあげよう。  (6月14日)

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