2005年06月24日発行892号 ロゴ:なんでも診察室

【病院小児科の削減案】

 4月22日から東京で開かれた日本小児科学会学術集会での私たち医療問題研究会メンバーの目標は、湾岸戦争帰還兵の子どもに奇形が増加していることを発表することでした。新大阪で、まず確認したのは、鞄に発表用の表や図が入っているかです。なにしろ、名古屋をすぎてから発表用のスライドを忘れてきたことに気づいた経験もありますので。

 ホッとした後、京都駅で共同発表者の高松氏と合流しました。車中、今年の学会では小児救急問題が討議されるからと、むりやり見せられた資料で眠気が吹っ飛んでしまいました。なんと、「小児救急の改革」の名で、実は小児医療全体の統廃合を学会として推進しようというのです。

 私は、日本小児科学会総会で、薬害エイズ、風邪に抗生物質、喘息薬、乳児突然死、インフルエンザ脳症などで、声なき声を背景に発言してきました。「またあいつか」と思われたくないので黙っているつもりでした。ところがいざ学会総会が始まると、つい手が挙がっていました。「小児救急の改革と言いながら、現在の病院小児科を激減させる案ではないか、いくつ減らすつもりか」という質問に明確な回答はありませんでした。

 それもそのはずです、その後に学会担当理事から提供された資料では、現在3528か所の病院小児科の2500か所以上を閉鎖するという案なのです。あたかも救急や小児専門医療を充実させるかに見せながら、小児科医などのがんばりで住民の要望に応えている病院小児科を、不採算部門であるが故に激減させるものです。

 その後の高松氏の調査などで、日本小児科学会案は、実は大規模な医療機関合理化と直結していることがわかりました。その一つは、6割が赤字という約1千の自治体立病院の統廃合です。「三位一体改革」の下で、これを「公設民営」とする動きが活発化しています。京都府大江町の国保大江病院では、公設民営化にあたり、今までの病院職員は全員解雇の上、再雇用するのです。まさに、国鉄分割民営化と同じ、あこぎな手法で、赤字の小児科は切り捨てられるのです。

 小泉「構造改革」は一部の患者や医療関係者の利益を保証するかのように見せながら、あっという間に改悪を進めます。しかし、この案の最大の弱点は、小児科医の労働がきつくて大変だからよくしようと言いながら、その大変な人たちの職場を消滅させることです。数千人の小児科医が職を失います。彼らが開業しますと2万5千の小児科医院の経営を圧迫します。なによりも、地域住民は身近な病院小児科の医療を受けられなくなります。それらを明確にしながら合理化案に抵抗してゆきます。

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