理論・学習誌『民主主義的社会主義第56号』

【イラク市民レジスタンス連帯の意義】

佐藤和義

5.イラク労働者共産党とわれわれの相違点、検討点

 われわれはイラク労働者共産党が主張する自由・平等・政教分離をかかげ闘うという方針を支持する。グローバル資本主義の戦争システムを解体する大きな一歩としてイラク占領軍撤退を早期にかちとるためである。女性を含めイラク民衆全ての力を動員し国際連帯の中で勝利していこうとする方針は世界の反戦運動の展望でもある。占領軍撤退をかちとりイラクに政教分離、民主主義を実現していくイラク市民レジスタンスを強化しなければならない。この一致点の上に立ちわれわれとイラク労働者共産党との間には当然のことながら相違点がいくつかある。まず世界情勢の捉え方において相違がある。彼らは世界を二つのテロリストが支配していると分析する。しかしわれわれはアメリカを軸とするグローバル資本主義が世界を支配しているのであり、イスラム政治勢力は世界的に見れば相対的に小さな政治・経済勢力であると捉える。もちろん中東アラブ世界では大きな存在であるが。しかもイスラム政治勢力はアメリカをはじめとするグローバル資本主義の鬼子であり、イラク中東情勢の悪化の根本原因はアメリカ、イスラエルにあると考える。アメリカおよびその同盟軍がイラク戦争を始めた最大の犯罪者であり、イスラム政治勢力が始めたわけではない。われわれは全世界に民主主義的社会主義を建設していく上で、イスラム武装勢力を追放しなければならないと考えているのである。

 さらにつくられるべき社会主義について崩壊したソ連をブルジョワ国家と捉えるなど社会主義像について検討すべき点は多い。イラク労働者共産党の綱領ではロシア革命によって成立した「労働者国家は国家資本主義経済を基礎とする巨大な官僚と軍事組織を持つ新たなブルジョワ国家に取って代わられたのである」と規定している。しかし崩壊したソ連邦が官僚主義国家であったことは事実だが、資本主義が復活していたと見ることはできない。またいかにして社会主義を実現していくのかについて、われわれの綱領は「長期的世界的過程」と捉えているが、イラク労働者共産党はどうとらえているのか不明確に思われる。第三世界のブルジョワジーをどう捉えるかについて、ソ連崩壊後の世界において民族民主主義革命を経て社会主義へ進むという道はありえないという見地から肯定できるが、なお検討が必要である。またホメイニの評価、イスラム政治勢力の階級分析については今後の検討課題だと考えている。

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